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プレスリリース・研究成果

量子アニーリングとAIで材料の新しい組成を発見 工場での製造工程最適化や生物分野などへの活用拡大に期待

研究のハイライト

化学材料の組成探索において、量子力学の現象を利用した最適化手法である量子アニーリング(注1)と人工知能(AI)の機械学習を活用することで、これまで未探索であった目標特性値を持つ新規化学材料の組成を発見しました。

量子アニーリング技術の従来の最適化という目的に応じた活用だけでなく、量子力学に基づく探索という性質を最大限利用するという新しい活路での応用例に取り組み、その実証研究に成功しました。

本研究結果は、材料組成のみならず大きく化学分野や生物分野など活用の幅を大きく広げる進歩であり、量子アニーリング及び関連技術の実社会課題への応用、適用を後押しする結果です。

これまで材料の新規組成探索では、様々な組み合わせを探索し提案された候補組成について、スーパーコンピュータによるシミュレーションを行い、その組成の物性評価を実施する必要があります。そのため膨大な時間がかかる探索を効率よく実施することが求められています。

東北大学大学院情報科学研究科大関教授らの研究グループは、韓国電機大手LG Electronicsグループの日本での研究法人LG Japan Lab株式会社(横浜市・呉彰浩社長)と、化学材料の組成探索を量子アニーリングとベイズ最適化(注2)と呼ばれる機械学習技術を連携し、新規組成探索というテーマにおいて共同研究を実施してきました。その結果、これまで未探索であった目標特性値を持つ新規化学材料の組成を発見しました。

本研究にて検証を行った手法は、化学材料の組成探索に限らず、創薬分野での候補物質の探索や、都市の人流シミュレーションや製造工程におけるパフォーマンスの評価など高度で複雑な現象における新しい解決手段の探索など、広く産業分野の実社会課題への適用が期待されます。

本研究成果は、2023年12月12日にコンピュータ分野の専門誌 Frontiers in Computer Scienceに掲載されました。

研究者情報

大関真之

教授

東北大学大学院情報科学研究科

用語解説

注1. 量子アニーリング
極低温において、原子や分子などの非常に小さいスケールでは、結果が確率的に変動する「量子揺らぎ」が存在します。これを利用して揺らすことでひっかかりのない安定した配置へ誘導する量子アニーリングと呼ばれる技術が 1998 年に東京工業大学の当時大学院生であった門脇正史氏(現:デンソー株式会社)、西森秀稔名誉教授から提案されました。カナダのベンチャー企業である D-Wave Systems 社が量子アニーリングの原理に従ったコンピュータを製作して販売をしています。原子や分子の振る舞いを調べる量子シミュレーションや、様々な可能性の中で最も良い回答を探索する最適化問題、人工知能の基盤技術となる機械学習への応用などが注目されています。この量子アニーリングでは、量子揺らぎにより、デジタル信号処理における0と1の重ね合わせ状態を作ることができます。この重ね合わせを巧みに利用することで、どちらの状態にあるのが最も相応しいのか、組み合わせ最適化問題における解答を探索することができます。
注2. ベイズ最適化
可能な限り少ない回数でブラックボックス関数の性質を理解し、この関数を最適化することを実現する為の手法です。基本的な考え方を記載します。まず、既存のデータセットからブラックボックス関数をモデル化する代理関数を定義します。代理関数に基づき、ブラックボックス関数の次の探索点を決定する獲得関数を定義します。獲得関数を最適化することで得られた次の探索点を実際にブラックボックス関数で評価し、得られた入出力関係を既存のデータセットへ追加し、代理モデルを更新します。この手続きを反復することでブラックボックス関数の最適化を目指します。