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プレスリリース・研究成果

スピングラス理論の新たな展開-複雑系の厳密な解析から最先端技術の新たな地平へ-

研究のハイライト

温度カオスとリエントラント転移の間に深い関係を発見

数値計算に頼らない厳密な論証を初めて実現

機械学習や量子技術など幅広い分野への応用に期待

東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 基礎研究機構の西森秀稔特任教授(東北大学 大学院情報科学研究科 特任教授)、理学院物理学系の大関真之教授(東北大学 大学院情報科学研究科教授)、情報理工学院 数理・計算科学系の奥山真佳特任助教(東北大学大学院情報科学研究科助教)らの研究チームは、磁性体の一種であるスピングラス(用語1)において、これまで無関係と考えられてきた二つの現象「温度カオス(用語2)」と「リエントラント転移(用語3)」の間に、数理的に厳密なつながりがあることを世界で初めて示しました。さらに、西森ライン(用語4)と呼ばれる特別な条件下では従来は起こらないとされてきたレプリカ対称性の破れ(用語5)が起こり得ることを明らかにしました。これらは数値計算や近似的な手法ではなく、厳密な論理に基づく理論解析によって得られた成果であり、スピングラス研究の長年の常識を大きく塗り替えるものです。また、これらの発見は物理学の内部にとどまらず、機械学習や量子コンピュータの基礎技術にまで影響が及ぶ可能性を持っています。

本成果は、10月22日付(米国東部時間)の「Physical Review E」誌に掲載されました。

論文情報

タイトル
Temperature chaos as a logical consequence of the reentrant transition in spin glasses
著者
Hidetoshi Nishimori, Masayuki Ohzeki, and Manaka Okuyama
掲載誌
Physical Review E

研究者情報

特任教授(客員) 西森秀稔

大学院情報科学研究科

東北大学

教授 大関真之

大学院情報科学研究科

東北大学

助教 奥山真佳

大学院情報科学研究科

東北大学

用語解説

(1)スピングラス
通常の磁石と異なり、原子の持つ微小磁石がランダムな方向に凍結した磁性体。
(2)温度カオス
スピングラスを冷やすとスピンは特定の配置に落ち着くが、温度を少し変えるだけで配置全体が大きく変わる現象。
(3)リエントラント転移
通常は冷やすほど秩序が増すが、さらに冷やすと再び無秩序に戻るという逆説的な現象。
(4)西森ライン
スピングラスの性質を厳密に解析できるよう設定された温度と確率の間の条件を表す線。
(5)レプリカ対称性の破れ
本来は同じようにふるまうはずの「系のコピー」が、それぞれ違う状態になってしまう現象。