子育て中の保護者と
子育て経験を持つ地域のシニア世代をつなげ
保護者の孤独や不安を地域で支えたい!
しかし ...
量子アニーリングと呼ばれる、
膨大な候補の中から望ましい組み合わせを探すための計算技術で
解決できるのでは?
そこで研究グループは
量子技術を活用した子育て支援者との相性マッチングで
子育ての孤立を地域の力で解決する手法を開発しました
託児や家事代行などの、身体的・時間的負担を軽くするものではなく、
子育ての不安を感じる保護者と、
地域に住む子育ての先輩たちをつなぎ、
子育て経験のある人に話を聞いてもらうこと、
悩みを共有すること、
地域の中で見守られていると感じられることなど、
「心理的な安心感」につながる支援の実現を目指しました。
仙台市での実証の結果
複数の最適なマッチング候補を提示できました
考え方や家事志向性等に基づく10項目を4段階評価
| ID | 質問事項 | 評価項目① | 評価項目② |
|---|---|---|---|
| 1 | 思考スタイル | 慎重に考える | 決断ができる |
| 2 | 生活環境の好み | 整理整頓が好き | インテリアなど個性のある環境が好き |
| 3 | 家事の進め方 | できる限り丁寧に進める | できる限り効率的に進める |
| 4 | 自分のパーソナリティ認識 | 穏やか | 元気 |
| 5 | 行動指針 | 周りとの調和を考える | 周りの手本となる |
| 6 | 人との関わり方 | 裏方として支えたい | リードしたい |
| 7 | 興味関心の広げ方 | 自身の興味を中心として範囲を広げたい | 自分の思いもよらない考えに触れたい |
| 8 | 自己研鑽のスタイル | 地道に積み重ねる | 飛躍を試みる |
| 9 | コミュニケーションスタイル① | 聞き上手 | 伝え上手 |
| 10 | コミュニケーションスタイル② | 聞かれたことに答えるのが上手 | 質問することが上手 |
この研究は
社会課題の発掘・分析・解決まで挑む講義
『実践的量子ソリューション創出論』
から生まれました!
課題提供企業様と受講生がそれぞれの課題・知見を持ち寄り、実社会の課題を数式に翻訳。
量子コンピュータを解決手段として実際に用いる講義です。
研究グループのコメント
このプロジェクトは、技術からではなく“人の想い”から始まりました。
日本では多くのお母さんが、幼い子どもをほぼ一人で育てています。
家事も育児も心の負担も、すべて一人で抱える日々です。
一方で、日本の多くの高齢女性はとても元気で、人の役に立ちたいという想いを持っています。
しかし、その力を発揮する場が十分にありません。
私たちは考えました。
この2つのグループを、互いの気持ちを大切にしながらつなげることはできないだろうか?
ただ助けを提供するのではなく、安心できる“相性の良い関係”を築けるように。そこで、母親と高齢女性をつなぐマッチングシステムを開発しました。
しかし、この仕組みがうまく働くには“相性”が欠かせません。
家庭に入る相手だからこそ、信頼できて、ペースや悩みや価値観が近い方が良いのです。
私たちは双方にアンケートを行い、価値観や好み、安心できる条件などを距離として扱い、その“距離”を最適化することで、お互いに自然で心地よい関係になれるマッチングを行いました。
これは数学だけの問題ではありません。人の気持ちが関わる社会の課題です。また、この取り組みを通じて新たな子育ての形が生まれるかもしれません。
科学はこうした優しい社会づくりにも力を発揮できる——私はそう信じています。
(本多瑠美子 | 東北大学 大学院情報科学研究科)
私たちは、仙台で保育園や親子の居場所を運営しています。でも利用できるのは通える距離に住んでいる人のみで、人数に制限があることも少しもどかしく感じていました。
ですがこの研究では、私たちの拠点に来てもらうのではなく、お母さんの近くに暮らすシニアの方とつないでいくのです。徒歩や電車で会いに行ける距離に、気軽に話を聞いてくれる人がいる。それだけで、支えられる方の数にも、住んでいる場所にも、制限がなくなっていくのだと気づかされました。
初めて会う二人が本当に打ち解けられるのだろうか、という不安もありましたが、実際の訪問に立ち会って、その不安はすぐに消えました。
初対面のはずのお母さんとシニアの方が、気づけば子育ての悩みを笑いながら話している。訪問を終えた利用者の方が「またこの人に来てほしい」と言ってくれる。
「相性を考えてつなぐ」ということは、こんなにも自然に場の空気を変えるのかと驚かされました。
この実証は、大関研究室と、仙台市の後押しと、地域で活動する私たち事業者の協力で実現できました。研究室の皆さんが子育ての課題の本質に向き合ってくれたことで、地域の現場で実際に人と人がつながる体験が生まれました。その役割の一端を担えたことを、とても光栄に思っています。
孤育ての不安を地域の力で支える。この仕組みを一度きりの実証で終わらせず、仙台から持続的なサービスとして届けていくことが、私たちの次の役割だと考えています。
(佐藤里麻 | MUSASI D&T株式会社/東北大学 大学院情報科学研究科)
子育て支援に量子計算の組み合わせ、いったい何が起きちゃうんだと思いますよね。私たちは、子育て中の保護者やシニア世代が抱える悩みに着目し、世代を超えてお互いに寄り添い、支え合う仕組みを最適化問題として捉えることで解決を試みました。子育て支援の現場に根ざした課題を出発点に、ドメイン知識を生かして量子アニーリングに適した数理モデルを構築し、さらに実際のフィールドで検証してその有効性を示した点が、本取り組みの大きな特徴です。
今後、量子計算技術の発展とともに、社会の身近な課題を解決する、面白くてワクワクするようなソリューションが数多く生まれることを期待しています。
(松本侑真 | 東京科学大学 理学院物理学系)
量子アニーリングは、生産計画における工場の効率化や通信分野での通信品質の向上など、これまで主に業務効率やシステム性能の向上に活用されてきました。
一方、本研究では、人同士の相性や価値観といった内面的な要素を数理モデルとして取り入れ、人に寄り添った子育て支援を実現した点に大きな価値があると考えています。今後も、本事例のような量子アニーリングによる新たな価値創出が、さまざまな社会課題の解決につながることを期待しています。
(高林泰成 | 東北大学 大学院情報科学研究科)