台湾 開催レポート
QI4U in Taiwan 2026(2026年3月16日 - 3月18日)
台湾にてQI4Uワークショップを開催しました(3/16-3/18)
2026年3月、3日間にわたり台湾にて、量子コンピューティングに関するワークショップ「Quantum Infinity for You in Taiwan 2026 (QI4U in Taiwan 2026)」を開催しました。本レポートでは、イベントの概要や、実際にイベント中に行った取り組みについて紹介します。
思いがけずQI4Uシリーズ"トリ"に!?
このQI4Uイベントは、台湾だけでなく、2月上旬のイタリア開催を皮切りに、韓国、フィンランド、ポーランド、中国、ペルーと続き、今回で7カ国目の開催となりました。さらに、1週間後にはイギリス開催も予定されていましたが、諸事情により対面開催が急遽中止となってしまったため、結果的にこの台湾開催がシリーズ最後の開催となり、大きなプレッシャーを感じていました。しかし、これまで各国で開催されたイベントの成功例や改善点をできる限り取り入れ、準備を進めました。
実は、QI4Uシリーズをこれほど多くの国で展開するのは今年が初めてですが、台湾開催自体は1年前にも実施しています。当時は、今回も共催として参加してくださったNational Pingtung University(NPTU)のChia-Ho Ou教授のご協力のもと、NPTU内の会場をお借りして開催しました。屏東は台湾南部に位置していますが、今回は、より多く、かつ多様な人材に参加してもらうことを目指し、台北のSyntrend Creative Parkを会場として開催しました。その狙い通り、台北周辺の大学生が多く参加してくれました。しかし、それだけにとどまらず、NPTUの学生も参加してくれたほか、企業から参加してくださった方もおり、多様なバックグラウンドを持つ参加者が集まるイベントとなりました。
1日目:量子アニーリングと組合せ最適化に関する講演・講義
最初に宮本からイベント全体の概要について説明を行い、その後、NPTUの学長より開催にあたってのご挨拶をいただきました。
イベント初日は、主に量子アニーリングと組合せ最適化問題に関する講演・講義を行いました。午前最初のセッションでは、大関先生による講演が行われ、量子アニーリングを用いた実社会課題へのこれまでの取り組みについて紹介していただきました。参加者の中には、「量子」という言葉に対して難しいイメージを持っていた人も多かったと思います。しかし、交通制御や化学材料探索、フォトモザイク生成など、幅広い分野へ応用できることを知り、新たな発見につながったのではないかと思います。
続いて、NPTUのOu教授より、量子アニーリングを活用したこれまでの研究事例について、紹介していただきました。その中では、「何を最適化対象とするのか」「どのような制約条件が存在するのか」を意識することの重要性など、組合せ最適化問題に取り組む上での基本的な考え方について講演していただきました。特に、最後のスライドにあった “Think in Objectives. Define by Constraints. Solve with Quantum.” という言葉は非常に印象的で、今でも強く記憶に残っています(写真参照)。
昼休憩を挟み、午後のセッションでは、我々学生メンバーによる組合せ最適化問題に関する講義を行いました。
最初に、秋吉くんと岡田くんが、組合せ最適化問題の基本例であるナップサック問題を題材に、実際にどのように最適化問題をQUBOへ定式化するのかについて講義を行いました。さらに、実際のプログラムコードを用いたハンズオンも実施し、参加者が手を動かしながら学べる構成となっていました。
続いて、宮本はより複雑な例としてスケジューリング問題を取り上げ、同様にどのように定式化するのかについて講義を行いました。
最後に、鹿内くんが、ナップサック問題と経路最適化問題を題材として、「どのような視点で最適化問題を定義するのか」に焦点を当てた講義を行いました。単なる数式の説明にとどまらず、現実の課題をどのように整理し、制約条件や目的関数へ落とし込むのかについて、具体例を交えながら解説してくれました。
このようにして、イベント初日は無事に終了しました。
2日目:グループワークによるオリジナルの定式化
2日目は、グループワークを中心に進行しました。まず最初に、私からグループ分けの発表を行いました。前日の夜に参加者へ事前アンケートを実施しており、「せっかくならリアルタイムでグループ分けを行いたい」と考え、初日終了後に急遽グループ分け問題を定式化し、実装まで行いました。本番では、その最適化の様子をスクリーンに映しながら、量子アニーリングを用いてリアルタイムにグループ分けを実施しました。「結果は神のみぞ知る」ならぬ、「量子のみぞ知る」という少し遊び心のある試みでもありました。
その後、4〜5人構成のチームを5組作成し、それぞれのチームに学生メンバーを配置して、アイデア出しからグループワークを開始しました。私の担当チームでは、比較的早い段階でテーマ案を出してくれた参加者がいたこともあり、テーマ決め自体はスムーズに進みました。一方で、チームによっては「そもそも何を題材にするか」という段階から苦労している様子も見られました。
また、テーマが決まった後も、「どのように問題を定式化するのか」「何を制約条件として扱うのか」などについて活発に議論が行われていました。各チームとも試行錯誤を重ねながら実装を進め、最終的にはテーマ設定と基本的な実装を何とか形にするところまで到達し、2日目を終えました。
3日目:成果発表会
最終日は、2日目のグループワークの成果発表を行いました。午前中は、定式化のアイデアや実装結果を整理してスライドにまとめ、午後には各グループによる発表を行いました。各グループのテーマは以下のようになります。
- グループ1:太陽系外縁天体に向かうための軌道最適化
- グループ2:夜市における屋台配置最適化
- グループ3:日常行動最適化 ― 家族事例研究 ―
- グループ4:台北101における経路最適化と資源配分
- グループ5:手術スケジュール最適化
斬新な問題設定から既存の問題設定を台湾独特の題材へ落とし込んだものまで、多様なテーマが発表されました。2日目と3日目の午前という短期間ではありましたが、どのグループも役割分担を行いながら効率よく作業を進めていたのが印象的でした。さらに、各グループが実際に定式化を行い、最適化まで実装できたことには驚かされました。発表会終了時には記念撮影を行い、最後にOu教授から閉会のご挨拶をいただき、無事にイベントを終えることができました。
最後に
今回のワークショップは、私にとって、これほど大規模なイベントに主催側として関わる初めての機会でした。不安もありましたが、Ou教授をはじめとするNPTUのスタッフの皆さま、鹿内くん、岡田くん、秋吉くん、山田くん、さらには大関さん、本多さんのご協力のおかげで、無事に終えることができました。
参加者、日本メンバーともに、英語を母語としない中でのコミュニケーションには苦労もありましたが、それ以上に、参加者の皆さんの高い意欲に大きく支えられた3日間でした。