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第12部:ローラン級数展開の計算テクニック —— テイラー展開と等比級数の融合

前章でローラン級数展開の概念を学びましたが、実際に複雑な関数をローラン展開するにはどうすればよいのでしょうか。積分をガリガリ計算する必要はありません。すでに知っているテイラー展開(マクローリン展開)と等比級数の公式をパズルのように組み合わせることで、システマティックに展開式を導き出すことができます。

最もシンプルな例:既知の展開式の代入

まずは、既によく知っている関数の展開式をそのまま代入するアプローチです。 例として、 という関数を の周りでローラン展開してみましょう。指数関数 のマクローリン展開は次のようになります。

これを元の関数に代入し、全体を で割る(つまり を分配する)だけで、あっという間にローラン展開が完了します。

この式を見ると、(つまり )の係数は です。したがって、この関数の における留数は であることが一瞬でわかります。


等比級数の公式を「関数」に拡張する

次に、分母に多項式や関数が含まれている場合の強力な武器となるのが、等比級数の和の公式です。

この公式の の部分を、丸ごと別の関数 に置き換えてしまいます。符号がプラスの場合は、さらに次のように変形できます。

このテクニックを使って、少し複雑な関数 を展開してみましょう。 まず、分母の をマクローリン展開します。

分母全体を でくくり出します。

ここで、括弧の中身を先ほどの公式の だとみなします。式(12.4)に従って の形に展開します。

これを次数ごとに整理すると、見事にローラン級数が得られます。


究極の応用:双曲線関数と留数の抽出

最後に、さらに高度な例として の展開に挑戦しましょう。双曲線正弦 は指数関数から作られ、そのマクローリン展開は奇数乗だけが残る美しい形になります。

これを使って、まずは の部分だけを展開します。先ほどと全く同じように でくくり、等比級数の公式を適用します。

括弧の中を整理します。

最後に、忘れずに元の関数の を掛け合わせます。

ここで最も重要なのは、 の係数である です。留数の定義を思い出すと、ローラン展開の の係数()こそが留数そのものでした。 つまり、面倒な極限計算や微分を何回も繰り返さなくても、この代数的な展開パズルを解くだけで、特異点での留数が であるとズバリ求めることができるのです。