第2部:周期現象の解析 —— フーリエ級数
前章で学んだマクローリン展開は「関数を多項式で表す」というアプローチでしたが、この章では複雑な波(関数)を「シンプルな波の足し合わせ」として表現する「フーリエ級数展開」について学びます。
オイラーの公式の復習
オイラーの公式により、複素指数関数と三角関数は以下のように美しく結びついています。
この式を変形することで、波の基本となる と を、それぞれ指数関数で表現することができます。
波の重ね合わせ:複素フーリエ級数展開
あらゆる周期関数 を、基本的な波の重ね合わせとして表現できないでしょうか? これがフーリエ級数展開の基本的なアイデアです。 ここでは、式(2.1)の複素指数関数を用いて、関数 を次のように無限の足し算で展開します。
このとき、私たちが知りたいのは「それぞれの波がどれくらいの強さ(振幅)で含まれているか」、すなわち各係数 の計算方法です。
係数 の計算とクロネッカーのデルタ
係数 をうまく抽出するために、波の「直交性」という強力な性質を利用します。 具体的には、異なる周波数 と の波を掛けて積分すると、周波数が等しいとき()だけ となり、異なるときは波が打ち消し合って になります。この結果は「クロネッカーのデルタ 」と呼ばれます。
この直交性の性質を利用し、式(2.3)の両辺に を掛けて積分することで、邪魔な項がすべて消え去り、目的の係数 だけを取り出すことができます。
(※積分区間は周期が であれば、 から まで積分しても同じ結果が得られます。)
具体例で計算してみよう
先ほどの公式を使って、実際の関数を波の足し合わせに変形してみましょう。
例1: の場合
区間 において となる周期関数を考えます。 式(2.5)に従って部分積分を繰り返し行い、係数を計算してフーリエ級数の形にまとめると、次のようになります。
【バーゼル問題への応用】 ここで、得られた式(2.6)に を代入してみましょう。すると、 となり になる性質を利用して整理することで、自然数の2乗の逆数の和に関する有名な難問「バーゼル問題」の答えが導かれます。
例2: の場合
次に、区間 において (絶対値)となる関数を考えます。 同様に積分を行って係数を計算すると、偶数番目の項は になって消え、奇数番目の項だけが残る式が得られます。
これも式(2.8)に を代入して整理することで、奇数の2乗の逆数の和についての美しい関係式が得られます。