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第4部:箱の中に閉じ込められた粒子 —— エネルギーの「量子化」

前章までは波が空間を広がっていく現象を見てきましたが、もし粒子を絶対に抜け出せない硬い箱の中に閉じ込めたらどうなるでしょうか。 実は、私たちが量子力学と呼ぶエネルギーが飛び飛びになるというミクロな世界最大の不思議は、この波の閉じ込めから自然に導き出されるのです。

無限に深い井戸型ポテンシャル

粒子が の区間(箱の中)に閉じ込められているとします。箱の外には絶対に存在できないため、箱の外のポテンシャルエネルギーは無限大()とし、箱の中は平坦()と考えます。

箱の中での定常状態のシュレーディンガー方程式は次のようになります。

この方程式の一般解は、右に進む波と左に進む波の重ね合わせとして表されます()。


境界条件と「飛び飛び」のエネルギー

粒子は箱の外に出られないため、壁の位置()では、波動関数(粒子の存在確率)は必ずゼロにならなければなりません。

まず の条件を代入すると、 となり、 であることがわかります。 これを一般解に戻し、オイラーの公式を使って整理すると、波動関数は**サイン波(正弦波)**の形になります。

次に の条件を代入します。

波が完全に消えてしまわない()ためには、 にならなければなりません。つまり、 の整数倍である必要があります。

ここで を代入してエネルギー について解くと、驚くべき結果が得られます。

エネルギー はどんな値でもとれるわけではなく、 という整数(量子数)に対応した特定の「飛び飛びの値」しか許されないことが証明されました。これが量子化の正体です。


規格化と固有関数

許された波の形(固有関数)は となります。 箱の中のどこかに必ず粒子が存在するため、確率の合計が1になるという規格化の条件 を計算して定数 を決定すると、最終的な波動関数の形が得られます。

これらの異なるエネルギー状態の波同士を掛け合わせて積分すると、同じ状態の時だけ になり、違う状態の時は になるという直交性(クロネッカーのデルタ )という美しい性質を持っています。


エネルギー準位と光のスペクトル

の一番エネルギーが低い状態を基底状態 のよりエネルギーが高い状態を励起状態と呼びます。

粒子が高いエネルギー状態 から低い状態 にジャンプ(遷移)する時、そのエネルギーの差額が光(光子)として放出されます。

エネルギーが飛び飛びであるため、放出される光の周波数(色)も飛び飛びになります。これが、ネオンサインや花火の色が特定の元素ごとに決まった色(線スペクトル)になる理由です。


インタラクティブ・シミュレーター:なぜエネルギーは飛び飛びになるのか?

エネルギー のスライダーを細かく動かしてみてください。 ほとんどのエネルギーでは波が右側の壁()でゼロにならず、箱の中に存在できません(赤色で表示されます)。

しかし、エネルギーが といった特定の「飛び飛びの値」にピッタリ合った瞬間にだけ、両端がゼロになる美しい定在波(青色)が完成し、箱の中に存在できるようになることが体感できます。

粒子のエネルギー (E):1.00
✅ 境界条件クリア!
n = 1 の量子化された状態(定在波)として存在可能です。

Professor Masayuki Ohzeki Lecture Notes