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第5部:フーリエ変換が暴く「量子化」の正体と確率の保存

これまで、運動量 を微分演算子 に置き換えるという「量子化」のルールを使ってシュレーディンガー方程式を導いてきました。しかし、なぜ運動量が「空間の微分」に化けるのでしょうか? その最大の謎を解く鍵は、数学における最強のツール**「フーリエ変換」**の性質そのものに隠されています。

1. 量子化とは「フーリエ変換」の別名である

関数 をフーリエ変換して波数 の世界の関数 に移す操作を考えます。

ここで、フーリエ変換の最も重要なメリットは、「実空間での微分」が「波数の世界での掛け算」に化けるという点にあります。実際に微分を計算してみると、複素指数関数の肩から が降りてくることがわかります。

ここで、ド・ブロイの関係式 (すなわち )を代入してみましょう。

これが「量子化」の正体です。運動量を微分演算子で書くという行為は、物理的な仮定というよりも、「位置の視点」から「運動量の視点」へフーリエ変換で切り替えた際に生じる数学的な必然なのです。

ブラ・ケット表示による視点の統合

この関係は、線形代数における「基底の変換」として整理できます。 ある状態 を「位置 」という座標軸で測ったものが波動関数 であり、「運動量 」という軸で測ったものが です。 この2つの視点を繋ぐ変換行列こそが、フーリエ変換の核となる波の式 なのです。


2. 規格化とパーセバルの等式:確率の保存

量子力学において、全空間で粒子を見つける確率の合計は必ず でなければなりません(規格化)。

では、視点を変えて「運動量空間」で合計を計算したらどうなるでしょうか? フーリエ解析には、「元の世界のエネルギー(2乗和)と、変換後の世界のエネルギーは一致する」というパーセバルの等式が存在します。

デルタ関数の役割

この証明には、異なる波同士を掛け合わせて積分するとゼロになり、同じ波の時だけトゲのように値が残るディラックのデルタ関数 が使われます。

この数学的性質により、位置空間での確率の積分は、運動量空間での確率の積分と完璧に一致することが保証されます。

つまり、「粒子がどこにいるか」という情報の合計は、フーリエ変換によって「粒子がどんな運動量を持っているか」という情報に形を変えても、一滴も漏れることなく保存されているのです。

Professor Masayuki Ohzeki Lecture Notes