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3日目: 拡散モデルと量子アニーリング ​

動画 2026-09-03 / 5時間59分 / YouTube Live
対応PDF 科学大2026 p.22-25、20260903 p.13-15
主題 虚時間Schrodinger方程式、Fokker-Planck方程式、SUSY量子力学、拡散モデル、score、反断熱項

この日の式の地図 ​

3日目の狙いは、量子アニーリング、確率過程、拡散モデルを「時間発展で分布を運ぶ」という同じ言葉で読むことです。実時間の量子力学から虚時間へ移り、そこからFokker-Planck方程式、Langevin方程式、SUSY因子化、score-based diffusionへ進みます。

段階式の役割対応ページ
虚時間QA実時間Schrodinger方程式を虚時間に回転する科学大 p.22 / 20260903 p.13
Fokker-PlanckP=ψψ~ から確率流を作る科学大 p.22-23 / 20260903 p.13
SUSY分解任意の基底分布を持つハミルトニアンを作る科学大 p.23-24 / 20260903 p.14
拡散モデルデータ分布からガウス分布へ、そして逆向き生成へ科学大 p.24-25 / 20260903 p.14-15
反断熱項との接続score項を、分布に追随させる補正項として読む科学大 p.25 / 20260903 p.15

コラム 3日目 0:26:09-0:29:21 / 0:29:21-0:35:49

物性物理という名前で、方法を統合する

3日目の入口では、この講義が物質そのものだけでなく、方法論のつながりを扱う回だと説明されました。日本物理学会の領域11、情報統計力学、スピングラス、経済物理、ニューラルネットワークなどが並び、物性物理の道具が別分野へ広がる様子が強調されています。

量子アニーリング、鈴木-トロッター分解、拡散モデルを別々の話にせず、共通する構造を見つけることがこの日の狙いです。最初に前日の量子古典対応を復習するのは、その橋を架けるためです。

1. 実時間から虚時間へ ​

出発点は、1次元の量子ハミルトニアン

H^(x,t)=−D∂2∂x2+V(x,t)

です。実時間のSchrodinger方程式は

iℏ∂∂tψ(x,t)=H^(x,t)ψ(x,t)

ですが、時間を虚数方向へ回す

t=−iτ

と、虚時間方程式

−∂∂τψ(x,τ)=H^(x,τ)ψ(x,τ)

が得られます。形式解は、時間順序を省略して書けば

ψ(x,τ)=exp⁡[−∫0τdτ′H^(x,τ′)]ψ(x,0)

です。実時間では位相が回りますが、虚時間では高いエネルギー成分が指数的に減衰します。そのため、虚時間発展は基底状態射影やGibbs重みと相性がよくなります。

同時に、随伴の向きに進む波動関数 ψ~ を導入します。板書では

−∂∂τψ=H^ψforward

と

−∂∂τψ~=−H^ψ~backward, adjoint

を並べています。後者は

∂∂τψ~=H^ψ~

と同じです。これらを掛け合わせて

P(x,τ)=ψ(x,τ)ψ~(x,τ)

を作ると、確率分布のような量が現れます。

科学大2026 p.22
科学大2026 p.22: 虚時間Schrodinger方程式とFokker-Planckへの入口
20260903 p.13
20260903 p.13: forward/backwardと確率流

コラム 3日目 0:40:53-0:41:48 / 0:41:48-0:56:24

トロッター方向を「何度も測る」感覚で眺める

横磁場が小さくなると、トロッター方向に並んだコピーは強くそろい、測定しても同じ古典状態が出る、という直観が語られました。横磁場が中途半端なときは、コピー同士が相関を持ちながら揺らぐ状態として見えます。

量子デバイスで同じ実験を何度も測る shots や number of reads と、トロッター方向のコピーを重ねて見る感覚が、比喩的に結びつけられました。さらにトレースは、虚時間方向の端をつなぐ周期境界条件として整理されています。

2. 確率密度から確率流を作る ​

P=ψψ~ を微分すると

∂P∂τ=∂ψ∂τψ~+ψ∂ψ~∂τ

です。H^=−D∂x2+V を用いると、ポテンシャル項は相殺し、

∂P∂τ=D(∂2ψ∂x2ψ~−ψ∂2ψ~∂x2)

となります。これは全微分の形にまとめられて、

∂P∂τ=−∂∂xJ(x,τ)

という連続の方程式になります。確率流は

J(x,τ)=−D∂P∂x+f(x,τ)P(x,τ)

の形で書けます。したがってFokker-Planck方程式は

∂P∂τ=−∂∂x[f(x,τ)P(x,τ)]+D∂2P∂x2

です。

対応するLangevin方程式は

dx=f(x,τ)dτ+2DdWτ

です。力がポテンシャルから

f(x)=−∂V(x)∂x

で与えられるとき、平衡状態では確率流が消えます。

J(x)=0

この条件から

Peq(x)∝exp⁡[−1DV(x)]

が出ます。講義中には、定常状態と平衡状態の違いも強調されました。

∂P∂t=0

なら定常状態ですが、平衡状態にはさらに

J=0

が必要です。J≠0 のまま時間変化が止まる状態は、非平衡定常状態です。

3. forward FPとbackward FP ​

板書では、P=ψψ~ を2通りに解いて、forward/backwardのFokker-Planck方程式を出しています。

まず

ψ=Pψ~

と書くと、

∂ψ∂x=1ψ~∂P∂x−Pψ~2∂ψ~∂x

です。これを使うと

∂P∂τ=D∂2P∂x2−2D∂∂x[P(x,τ)∂∂xlog⁡ψ~(x,τ)]

となります。これは

f+(x,τ)=2D∂∂xlog⁡ψ~(x,τ)

をドリフトとするforward Fokker-Planck方程式です。

一方で

ψ~=Pψ

と書くと、

∂P∂τ=−D∂2P∂x2−2D∂∂x[P(x,τ)∂∂x{−log⁡ψ(x,τ)}]

というbackward側の式が出ます。対応するドリフトは

f−(x,τ)=2D∂∂xlog⁡ψ(x,τ)

です。前向きと後ろ向きで拡散項の符号や時間の向きが変わるため、板書では

dx=f−(x,τ)dτ+2DdW(dτ<0)

または、逆向き時間 s=T−τ を使って

dy=f−(y,T−s)ds+2DdW

と書く見方が示されています。

ここで見えているのは、同じ P を作るにも、前向きの波動関数と後ろ向きの随伴波動関数の分解の仕方によって、ドリフトが変わるということです。この前向き・後ろ向きの非対称性が、拡散モデルの生成過程で重要になります。

コラム 3日目 2:12:30-2:28:03 / 2:28:03-2:29:24

虚時間にすると、確率過程の顔が見える

通常の実時間Schrodinger方程式から時間を虚数方向へ回すと、位相の回転ではなく、エネルギーの高い成分が減衰する式になります。このため、虚時間発展はGibbs-Boltzmann分布や基底状態射影と自然に結びつきます。

確率流の話では、定常状態と平衡状態の違いも補われました。時間微分が0でも流れが残るなら非平衡定常状態であり、平衡状態には流れそのものが0であることが必要です。詳細釣り合いを破る非平衡モンテカルロ法の直観も、この言葉で見通せます。

4. SUSY量子力学として見る ​

次に、Fokker-Planck方程式を量子力学的なハミルトニアンとして見やすくするため、Infeld-Hull分解、つまりSUSY量子力学の因子化を使います。

固有値問題を

(−∂2∂x2+Vq(x))ψ(x)=Eψ(x)

と書きます。板書では、ある関数 V(x) を用いて

A^=∂∂x+12V′(x),A^†=−∂∂x+12V′(x)

を定義しています。もし

A^ψ0(x)=0

なら、

∂ψ0∂x=−12V′(x)ψ0(x)

なので

ψ0(x)∝exp⁡[−12V(x)]

です。

この A^†A^ を計算すると

A^†A^=(−∂∂x+12V′(x))(∂∂x+12V′(x))

であり、

A^†A^=−∂2∂x2+14{V′(x)}2−12V″(x)≡H^SUSY

となります。したがって

H^SUSY=A^†A^

は非負で、

H^SUSYψ0(x)=0,ψ0(x)∝exp⁡[−12V(x)]

を満たします。つまり、欲しい分布の平方根を基底状態に持つハミルトニアンを構成できます。

例として

V(x)=12x2

なら

V′(x)=x

で、調和振動子型の因子化になります。講義では、調和振動子の生成消滅演算子もこの構造の一例として位置づけられました。

科学大2026 p.23
科学大2026 p.23: forward/backward FPとInfeld-Hull分解
20260903 p.14
20260903 p.14: SUSYハミルトニアン

5. 分布を基底状態として持つハミルトニアン ​

拡散モデルとの接続では、時刻ごとの確率分布 Pt(x) を考えます。もし

ψt(x)=Pt(x)

を基底状態として持つSUSYハミルトニアンを作るなら、

Pt(x)=ψt(x)ψ~t(x)

で、対称な場合には ψt=ψ~t=Pt と見ればよいです。

このとき、SUSY分解で使うポテンシャルは

Vt(x)=−log⁡Pt(x)

です。なぜなら

ψt(x)=exp⁡[−12Vt(x)]=e12log⁡Pt(x)=Pt(x)

だからです。

量子力学の形に戻すと、各時刻の分布 Pt に対して

H^SUSY(t)=−∂2∂x2+14{Vt′(x)}2−12Vt″(x)

があり、

H^SUSY(t)Pt(x)=0

を満たします。これが「確率分布を基底状態として持つハミルトニアンを作る」という意味です。

コラム 3日目 1:46:27-1:49:17 / 1:49:17-1:51:50

情報統計力学から量子アニーリングへ

Hopfield模型やニューラルネットワークの容量解析に、スピングラスのレプリカ法が使われてきた歴史が紹介されました。統計力学者がニューラルネットワークを本気で解析しようとしていた時代が、量子アニーリングの背景にあります。

Hopfield模型に横磁場を入れると、温度と横磁場が似た役割を持つことが見えてきます。温度を下げるシミュレーテッドアニーリングから、横磁場を弱める量子アニーリングへ発想を移す道筋は、この情報統計力学の文脈からも読めます。

6. 拡散モデルのforward過程 ​

拡散モデルでは、データ分布 P0(x) から出発し、時間とともにノイズを足して、作りやすい分布 PT(x)、典型的にはガウス分布へ近づけます。板書では

P0(x):データ分布⟶PT(x):作りやすい分布

という向きで描かれています。

forward過程は

dx=f(x,t)dt+2DtdWt

です。ft と Dt を適切に選ぶことで、初期データをだんだん壊して、最後には簡単な分布にします。対応するFokker-Planck方程式は

∂Pt∂t=−∂∂x[f(x,t)Pt(x)]+Dt∂2Pt∂x2

です。

この過程は生成のためには逆向きに解きたいものです。つまり、作りやすい PT から出発し、P0 に戻る過程を作る必要があります。

生成モデルの歴史と、VAE・GAN・拡散モデルにおける量子アニーラの役割は、生成モデルの補遺で比較します。

7. scoreを学ぶ ​

拡散モデルで学習される中心量は、確率密度そのものではなく、その対数微分です。板書では

S(x,t)=∂∂xlog⁡P(x,t)

を「スコア」として学習する、と書かれています。

P=ψψ~ なので、

log⁡P(x,t)=log⁡ψ(x,t)+log⁡ψ~(x,t)

です。したがって

S(x,t)=∂∂xlog⁡ψ(x,t)+∂∂xlog⁡ψ~(x,t)

と分解されます。

forward側のドリフトを

f+(x,t)=2D∂∂xlog⁡ψ~(x,t)

と置くと、講義の記法ではこれが

f+(x,t)=f(x,t)

に対応します。一方でbackward側は

f−(x,t)=2D∂∂xlog⁡ψ(x,t)

です。両者を足すと

f+(x,t)+f−(x,t)=2D∂∂xlog⁡P(x,t)=2DS(x,t)

です。したがって

f−(x,t)=−f+(x,t)+2D∂∂xlog⁡P(x,t)

とも書けます。

逆向き時間で生成過程を走らせると、板書の符号規約では

dx=[f(x,t)−2D∂∂xlog⁡P(x,t)]dt+2DdWt

の形になります。ここで追加された

−2D∂∂xlog⁡P(x,t)

が、学習したscoreから作る補正項です。通常の拡散モデルの記法では、D や時間向きの取り方に応じて符号は書き換わりますが、本質は「逆過程のドリフトにはscoreが必要」という一点です。

科学大2026 p.24
科学大2026 p.24: 拡散モデルとscore
科学大2026 p.25
科学大2026 p.25: backward driftとscore補正

ボルツマンマシンの学習則と量子アニーラによる負相の計算、フリーズ現象、時間依存摂動論による温度の設計は、ボルツマンマシンの補遺で詳しく扱います。

コラム 3日目 3:23:03-3:24:06 / 3:24:06-3:44:41 / 3:44:41-3:47:41

Boltzmann machineから拡散モデルへ

講義後半の主張は、拡散モデルの物理が虚時間量子アニーリングとして読める、というものでした。画像・動画・音楽などの生成を、確率分布をまねる問題として見直します。

Boltzmann machineやHopfield模型は、データ分布をGibbs-Boltzmann分布で表す初期の生成モデルとして紹介されました。ただし平衡化の遅さや表現の制限があり、拡散モデルではデータ分布をいったんノイズで壊し、作りやすいガウス分布から逆向きに戻すという構図に移ります。

scoreは、分布そのものではなく対数密度の勾配を学ぶ量として説明されます。これが逆向きダイナミクスに必要な「どちらへ戻ればデータらしいか」を与えます。

8. 反断熱項としてのscore補正 ​

拡散モデルの逆過程は、虚時間量子アニーリングの反断熱項として読むことができます。

量子アニーリングでは、作りやすい基底状態から、目的ハミルトニアンの基底状態へ有限時間で運びます。拡散モデルでは、作りやすいガウス分布から、データ分布へ有限時間で戻します。どちらも、途中の時刻ごとの目標状態または分布に追随させたいです。

虚時間側で時刻ごとの分布 Pt を基底状態に持つ H^SUSY(t) を考えると、単にforwardの力を反転するだけでは、有限時間で正しい Pt に乗り続けられません。そこで、score

∇xlog⁡Pt(x)

に比例する項を逆過程のドリフトへ足します。この「各時刻の分布へ押し戻す補正」が、反断熱項に対応します。

多次元の拡散モデルでよく使われる記法では、forward SDEを

dXt=f(Xt,t)dt+g(t)dWt

と書くと、reverse SDEは時間向きを反転した上で

dXt=[f(Xt,t)−g(t)2∇xlog⁡pt(Xt)]dt+g(t)dW¯t

の形になります。1次元で g(t)2=2D と置けば、2D∂xlog⁡P の項と対応します。

この式は、生成AIの技術的な話にとどまりません。量子アニーリングで培われた断熱・反断熱・スケジュール設計の考え方を、拡散モデルのノイズスケジュールや生成誤差に移植できるかもしれない、という研究の入口になります。

Score ハミルトニアンとCD項 ​

score補正と反断熱項の対応は、確率密度を平方根分布としてヒルベルト空間へ持ち上げると明確になります。まず時刻 t の確率密度 pt(x) を、その平方根

St(x)=∇xlog⁡pt(x),ϕt(x)=pt(x)

としてヒルベルト空間上の状態に持ち上げます。ここで St がscoreです。この ϕt を瞬間基底状態にするハミルトニアンを作ると、

H^sc(t)ϕt=0,H^sc(t)=−D∇2+D{12∇⋅St(x)+14|St(x)|2}

となります。つまりscoreは、逆向きSDEに足す経験的な補正というだけではありません。平方根分布を基底状態にするScore ハミルトニアンのポテンシャルを決める量でもあります。分布を確率過程として見るか、平方根を波動関数のように見るかで、同じ St の顔つきが変わるわけです。

もう少し細かく見ると、確率密度を2つの虚時間振幅の積

pt(x)=ψ~t(x)ψt(x)

として分解します。forwardのドリフトを bt=2D∇log⁡ψ~t と固定すると、残りの ψt がgeneration側の振幅になります。このとき ψt の方程式には、

∂tψt=−(H^ψ~,t+GtECD)ψt,GtECD=∂tlog⁡ψ~t

という追加項が現れます。ここで GtECD は Euclidean counter-diabatic connection と読める量です。ただし、これは実時間量子力学でそのまま出てくるHermitianなCDハミルトニアンそのものではありません。虚時間表示では規格化を変える縦方向の成分も混ざるので、物理的に遷移を起こす横方向だけを射影して取り出します。

QtGtECD|ϕ~t⟩=Qt|∂tϕ~t⟩,Qt=1−|ϕ~t⟩⟨ϕ~t|

この横方向成分をKato-Berry型の形に持ち上げると、

H^CD(ψ~)=i(QtGtECDΠt−ΠtGtECDQt)=i[Π˙t,Πt],Πt=|ϕ~t⟩⟨ϕ~t|

となります。ここまでをまとめると、拡散モデルのscore補正は、Fokker--Planck方程式の水準では「逆向きドリフトを正しい密度経路へ押し戻す力」です。一方、平方根分布を動く基底状態として見ると、その同じ力が、有限時間で経路から外れないためのCD接続として現れます。これが、score項を虚時間量子アニーリングの反断熱項として読む理由です。

横磁場の減衰スケジュールと生成誤差 ​

この対応ができると、生成誤差も量子アニーリングの言葉で議論できます。理想的には、generationは単純な事前分布からデータ分布へ戻るあいだ、各 λ に対応するScore ハミルトニアンの基底状態 |0λ⟩ を追随します。有限時間 T で走らせると、最後に基底状態から少し漏れる。この漏れが、生成された分布と目標データ分布のずれとして現れます。

虚時間発展では、始点側で生じた励起はギャップによって指数的に減衰します。そのため、代数的に残りやすいのはデータ端点側の寄与です。そこで森田・西森型の境界消去を、generationの終点 λ=1 に合わせて入れます。もっとも単純な例は

λr(s)=1−(1−s)r+1,djλrdsj|s=1=0(j=1,…,r)

です。r=0 なら通常の線形に近い終わり方で、残留誤差はおおまかに T−2 型になります。終点で1階微分まで消せば T−4、2階まで消せば T−6 というように、端点での止まり方を丁寧にするほど、有限時間由来の漏れが高次に抑えられます。

ただし、ここで重要なのは「スケジュールだけで何でも治る」という話ではないことです。拡散モデルでは真のscore Sλ を知らないので、学習されたscoreを

Sλθ=Sλ+ϵλ

と書くと、scoreの誤差 ϵλ はScore ハミルトニアンの摂動になります。

δH^λ=D(12∇⋅ϵλ+12Sλ⋅ϵλ+14|ϵλ|2)

このため生成誤差は、少なくとも概念的には

∥Q1ϕ1∥2≲CrT2r+2+Cϵηϵ2

のように読むことができます。ここで Q1 は最終時刻の基底状態に直交する成分を取り出す射影で、ηϵ はscore誤差が基底状態をどれだけ励起成分へ混ぜるかを、ギャップ込みで測った量です。確率密度の言葉では、∥Q1ϕ1∥2 は最終分布のずれ、たとえばHellinger距離の主要項として読めます。

第1項は有限時間でスケジュールを走らせることによる漏れで、森田・西森型の端点条件で改善できる部分です。第2項はscoreを学習で近似したことによる床です。どれだけスケジュールを滑らかにしても、scoreがずれていれば、最終的にはこの床にぶつかります。

さらに、量子アニーリングで小さいギャップが危険だったのと同じく、Score ハミルトニアンのギャップが小さい場所では生成も不安定になります。ギャップ Δ(λ) と結合の大きさ M(λ) を見積もれるなら、スケジュールを

dsdλ∝M(λ)Δ(λ)−2(1−λ)−r/(r+1)

のように、ギャップの小さい領域とデータ端点の近くで丁寧に進む形へ変えることができます。生成AIの実装では、これはノイズスケジュール、サンプリングステップの割り振り、学習済みscoreの信用度を同時に見るという設計指針になります。量子アニーリングの誤差評価は、この対応を通じて、拡散モデルの生成誤差を評価するための言葉にもなります。

コラム 3日目 3:57:53-4:02:33 / 4:02:33-4:19:40 / 4:19:40-4:24:40 / 5:54:43-5:57:40

同じ数理構造を見つけたら、知見を輸入できる

逆向き過程では、単に力の符号を反転するだけでは足りず、scoreに対応する項を足す必要があります。この補正は、虚時間量子アニーリングにおける反断熱項に対応します。

森田・西森のスケジュール条件は、拡散モデルのノイズスケジュールにも輸入できます。対象が違っても同じ数理構造が見つかれば、片方で得た知見をもう片方へ持っていける、という研究観がここにあります。

9月や10月を新しいことを始める区切りにする、という柔らかい呼びかけも、この研究観と響き合います。数式の対応を眺めて終わるのではなく、勉強でも研究でも、次の一歩につなげるための結びです。

Aharonovの二状態ベクトル形式からscoreを読み直す議論は、補遺: アハラノフの2ベクトル形式からscoreを見る にまとめました。